東京高等裁判所 昭和56年(ラ)94号 決定
原審判の認定事実は、その挙示する資料により認定することができるし、原審判の説示判断は、すべて正当として支持することができるので、それをここに引用する。
その他記録を精査しても、原審判を取消すべき違法の点は発見できない。
(沖野 内田 野田)
〔編註〕以下の判文は、当審決定理由で引用した原審判理由である。
関係者の戸(除)籍謄本および調査の結果によると、次の事実が認められる。
一、被相続人は昭和五三年七月一五日死亡したが、同女には戸籍上直系卑属、尊属がなく、兄弟姉妹もなかった。それで昭和五三年一一月一八日滝澤憲一が相続財産管理人に選任せられ、この事実は同月二七日官報に公告され、ついで同五四年五月一六日相続権主張の催告が官報に公告せられたが、公告期間の満了日である同年一二月一五日までに相続人の申出がなく、相続人不存在が確定し、その公告期間満了後三ケ月以内に本件申立がなされた。
二、(1) 亡田中和嘉は、養蚕の指導者として各地を廻り、鹿児島で申立人フチエと知り合い結婚し、昭和一三年一二月一四日その届出をなし、その後名古屋で鉄工所を経営していたものの、戦後松本にきて土建業を始め、長男申立人源次も手伝っていたが昭和四一年に倒産し、その後不動産業を営んでいた。
(2) 亡田中和嘉は、その間被相続人が居住していた借家を購入して、家主として被相続人と知り合い、家屋の修繕をしたりしているうちに親しくなり、昭和四〇年ごろから男女関係を持つようになった。
(3) 亡田中和嘉は、松本市大字入山辺四四三三番地に居住する妻申立人フチエ宅と被相続人宅とを行き来していたが、同四九年五月になって被相続人住居地に住民票を移し、それ以後同棲生活に入り、夫婦同様の生活を続けてきた。
(4) 亡田中和嘉は、被相続人が死亡した際、その療養看護に当り喪主になって葬儀を行い、その供養を行ってきた。
以上の事実が認定できる。
以上の認定事実からすると、亡田中和嘉は被相続と一〇数年にわたって男女関係を持ち、その間約四年間同棲し、死亡当時療養看護をなし、葬儀を喪主として行い、その供養もしているので、形式的には民法第九五八条の三の被相続人と生計を同じくしていた者に該当すると云えなくはないが、そもそも同人には法律上の妻(申立人フチエ)があるため、被相続人とは重婚的内縁関係にあり、右は法の認めない公序良俗に反する妾関係であって、民法第九〇条および家事審判法第一条の目的に副わないものであり、前記特別の縁故は、上記関係から生じたものであるから同人を民法第九五八条の三の特別縁故者として被相続人の遺産を分与することは公序良俗に反する法律状態の延長ないし、継続を認容するに等しく、前記法条の目的に反するものと云わなくてはならない。
よって、本件遺産を同人に分与することは相当でない<。以下略>